「苦手を克服する」
というのは、一見正しいように思える。
しかし私は、苦手を克服するよりも、得意なことを伸ばす方がいいと考える。
そう思ったきっかけは、最近始めたアルバイトでの出来事だ。
私のアルバイト先は、資格試験を行う「試験センター」。
いろんな資格試験をパソコンで受験できる場所だ。
ここで私は、受験者の受付業務や、試験で使うパソコンの管理などをしている。
仕事は簡単で、ほぼマニュアル通りの対応をすればよく、本部の方のサポートも充実している。
接客が苦手な私でも何とかやっていける環境なので、とてもありがたい。
仕事を始めてしばらくして気づいたことがあった。
それは、試験で使うパソコンにトラブルが多いこと。
試験中に電源が落ちる、画面が映らなくなる、などの対応をすることが何度かあった。
また、スタッフのパソコンでネットワーク不具合が起きたこともあった。
私は過去にITの仕事(社内のヘルプデスクなど)をしていた経験があり、パソコンは苦手ではない。
確かに、トラブルが起きると少し面倒に思うこともある。
しかし、原因を特定したり解決したりするのは、むしろ楽しいと感じる。
このときも、あれこれ調べるのを少し楽しみながら対応したのだった。
しかし、他のスタッフは違うようだ。
どうもみんなパソコンがあまり得意ではないらしく、トラブルが怖いと言っていた。
そして、
「パソコンが得意でうらやましい」
「あなたがいれば安心だ」
などと言ってくれるようになった。
これは意外な展開だった。
というのも、アルバイトの募集要項に「パソコンが得意な人」とは書いていなかったからだ。
私自身、これまでのITの仕事経験が活かせるとは考えてもみなかった。
むしろ最初は
「接客が苦手なのに受付業務って、選択ミスったかも」
と思っていたほどだった。
それが、入社1ヶ月ほどで周りのスタッフに頼りにされるようになっていた。
さらに、パソコンに強みがあることが自信となり、受付業務の方も自信を持ってできるようになったのだ。
今では社内で「仕事ができる人」ポジションになっている。
この経験から、「得意なことを活かす」ということがとても大事だと学んだ。
ただし、「得意」と言ってもすごく優秀でなければならないわけではない。
そうではなく、周りの人と比べて少しでも得意なこと、秀でたものがあればいいのだ。
私もITの仕事をしていたときは周りが優秀な人ばかりだったので、自分がパソコンが得意だとは思ったこともなかった。
しかし、環境が変われば人の評価も変わるもの。
パソコンが苦手な人の中に入れば、私でも「パソコンが得意な人」になれるのだ。
苦手を克服するな。
自分が勝てる場所で戦おう。
ひとつでも得意なことがあれば、大きな自信につながる。
その自信こそが、自分が苦手なことまでも打ち消してくれるのだ。